滋賀県甲賀市信楽町の山中にミホミュージアムという日本屈指の美術館があります。
I・M・ペイさんの設計
設計はI・M・ペイ(イオ・ミン・ペイ)さんです。
ルーブル美術館のガラスのピラミッドを設計された方でもあります。
世界的に有名な中国系のアメリカ人建築家です。
ミホミュージアムの回り方
ミホミュージアムは、レセプション棟(チケット売り場)と美術館棟が別棟となっており、この2棟が離れている為、来館者が迷わないよう、美術館のサイトでモデルコースの案内がされています。
↓ミホミュージアムのサイト「初めての方へ」
http://www.miho.or.jp/beginner/
ミホミュージアムに着くと、まずは、チケット売り場のあるレセプション棟が見えてきます。
レセプション棟でチケットを購入したら、美術館棟へ向かいます。
ここで、歩きで向かう方法と、電気自動車で向かう方法とが選べます。
ミホミュージアムのサイトではゆっくり歩いて行くのがお薦めということでしたので、私たちは歩きで向かいました。
桃源郷への入り口は「時空を超えるトンネル」
チケットを購入すると、美術館棟に向かいます。
この美術館棟に向かうアプローチに独特の世界感を与える空間的演出がされています。
それが、このトンネルです。
私が訪れたのは、6月でした。
桜のシーズンを終え、木々が青々としています。
トンネルの中は銀色の鋼板で覆われています。
外からの光が、波打つことなく滑らかにトンネルの曲線に沿って反射しています。
このトンネルのデザインについて、「時空を超えるトンネル」というタイトルで、ミホミュージアムのサイトで紹介されています。
大変な職人技が織り込まれているようです。
↓ミホミュージアムのサイト「時空を超えるトンネル」
http://www.miho.or.jp/episode/%E6%99%82%E7%A9%BA%E3%82%92%E8%B6%8A%E3%81%88%E3%82%8B%E3%83%88%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%AB/
このトンネルは季節毎に異なった表情を見せます。
春には桜のピンク色に染まるようです。
私が行った時は、あいにくの曇り空でしたので、彩度の綺麗な写真が撮れなかったのですが、6月~8月の期間であれば、トンネルの中は緑色に染まって見えるようです。
長いトンネルを抜けてきます。
外に綺麗な橋があり、その向こう側に美術館棟が見えてきます。
綺麗な橋です。
トンネルの銀板の光や、橋を支えるワイヤーが何とも言えない緊張感を与えます。
レセプション棟側ではトンネルばかりに気を取られていたのですが、トンネルを抜けた先で、ウグイスが鳴いていることに気づきました。
「ホーホケキョ」という鳴き声と、トンネルを抜け、橋を渡って辿り着く領域の深度が相まって、別の世界に足を踏み入れたようです。
橋を抜けると美術館棟へと続く階段を登ります。
美術館棟の建物は古民家風の屋根の形をしています。
実はこの建物の高さは施工性や現況地盤によるものではなく、建物からの眺望を最も美しいものにする為に設計された高さだそうです。
このトンネルから古民家風の美術館棟に続くアプローチのデザインについて、ミホミュージアムのサイトに紹介がありました。
I・M・ペイさんが如何に緻密にこのイメージを検討していたかが分かるエピソードです。
↓ミホミュージアムのサイト「アプローチロード」
http://www.miho.or.jp/episode/%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%89/
階段を登り、いよいよ美術館に入ります。
石とガラスの美しい美術館(ミホミュージアムの美術館棟)
丸窓の正面玄関を抜けた先は、外観の小さな古民家風のイメージとは大きく異なります。
扉を抜けると正面にはどこまでも続く山並みと大きな松の木が見えます。この開口は寺社建築にある襖絵か屏風絵のようにも見えます。
天井は、大きなガラスとスペースフレームの屋根でできており、とても現代的な印象です。
小さな古民家風の外観から一転して、大きな現代的なアトリウム空間が広がっているのです。
床と壁は全て白い石で仕上げられており、建築的な部分には他の素材は見当たりません。
とても贅沢に石材が使用されています。
この美術館は、全体の80%が地下に埋まっています。
石で形作られたランドスケープにガラスの屋根がフワリと掛けられているイメージです。
見た目の厚みも非常にぶ厚く設計されています。
階段部分の手摺も金物が使用されず、石を彫り込んだデザインとなっています。
廊下の写真です。
窓側の床に溝が見えます。
空調の吹出だと思います。
徹底して石材以外の素材が排除されています。
美術館棟のロータリーは、天井の中心に四角い天窓の開いたズッシリとした洞窟のような空間です。
帰りは、このロータリーから、電気自動車に乗ってレセプション棟まで帰ります。
まとめ
この美術館は、コントラストが面白い建築だと思いました。
アプローチが生み出す、日常と非日常のコントラスト。
小さな古民家風の外観から一転して広大で現代的な内観。
質量感のある石の床・壁と軽快で透明感のある天井。
また、石の厚みを感じさせるコーナーの石材の割付や設備関連の金物が分かりにくくされているデザインなど、細部まで緻密に設計されている点がとても綺麗だと思いました。
また、訪れたいと思います。
この美術館は閉館している期間が長く、訪れる際にはミホミュージアムのサイトで開館期間をよくよく確認する必要があります。
↓ミホミュージアムのサイト「来館情報」
http://www.miho.or.jp/information/
伝説の桃源郷は、一度出ると二度と入れない異界とされていますが、ミホミュージアムには何度でも来ることが出来ます。
季節毎に表情を変える時空のトンネルに、次は桜のシーズンに来てみたいものです。
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